少し、話をしましょうか。
あれは遠い日のこと。
あなたは独りきりでした。
仲間などいらないと、冷たい瞳で世界を見つめていたあなたは、本当は誰か側にいてほしかったのでしょう。
そして、あなたに手を差し伸べた存在がいました。
あなたはあの方の手を取り、忠誠を誓いましたね。
この方は守るべき主だと。
初めて、私以外に自分で決めた主を見つけたのでした。
なのにあなたは、あの方を裏切ってしまったと悔やんでいる。
あなたがそれを選ばなければならなかった理由は、恐らくはあなた以外にも知る方はいるでしょう。
それを選ばせてしまったのは私。あなたを守るためだなんて、傲慢な言葉で誤魔化してしまった。
けれどもう、あなたは罅だらけで壊れかけた硝子細工のよう。
ごめんなさい。あなたの居場所を奪っても、あなたを守りたかったのです。
あなたはたったひとつの言葉にさえ傷付いていたのですから。
長い時をかけて笑うことができるようになったのに、あなたは笑みを失ってしまった。
傷付くことを恐れ、傷付けることで自分を守ろうとしていた。
私が守っていた頃のあなたに戻ってしまっていた。
このままあなたが傷付くなら、私はあなたを守りましょう。
あなたを世界の果てに隠して、長い時をかけて癒やしましょう。
あなたから笑みを奪った存在から遠く離して。
だからどうか、笑ってください。
あなたは大切なものをたくさん手に入れましたね。
自ら手放さなければならなくて、とても辛いでしょう。
ごめんなさい。本当にごめんなさい。
けれど私は、あなたが傷付くことが、笑みを失ってしまったことが、何よりも辛いのです。
どうしてこんなことになってしまったのでしょう。
あなたはあの場所で、何の苦しみもなくいたはずなのに。
どうしてあなたは傷付いてしまったのでしょう。
いいえ、追及することはやめましょう。今はただ、おやすみなさい。
そして次に目覚めた時には、あなたに再び笑みが戻りますように。